知的財産権の1つである意匠権を独学で取ってみようというシリーズの3番目です。
1番目の基礎知識編はこちら。
2番目の意匠権出願編はこちら。
この新規性喪失については、今回意匠権の出願に関する記事を書いてみようと思ったきっかけでもあります。
自分みたいな弱者が自分のデザインを守れるきっかけになったら嬉しいですね。
サブタイトルの長さ。笑
役所の書類は長くなりがちなんですよね。笑
これは総務あるあるですが、「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」とか「市町村民税 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」とか「給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」とか、とにかく長い。
お経か。笑
ということで、意匠権における新規性喪失の例外規定を適用するにはどうしたらいいかについて書いてみます。
目次
背景
意匠権に限らず知財は「出願する前に公表してしまうと登録ができなくなる」という原則があります。
これがつまり新規性の喪失で、知財でめちゃくちゃ大事な点です。
なので多くの方が「言いたいけど言えない」ジレンマに陥っています。
さらに発案者の頭痛の種としてあるのが、「自分は以前から思いついていて我慢して沈黙を貫いているのに、どっかの誰かが同じことを公表してしまう」ということです。
これは実はSNSでよく起こっていることです。
ウェブサイト→ブログ→SNSの順に、アップロードつまり投稿の簡易さが上がります。
僕はその順番で、城→砦→陣(遊撃班)と例えたりします。
SNSは手軽にアップロードができるがゆえに、高頻度で上記のような現象が起こりやすくなります。
加えて、X(Twitter)などのSNSではタイムスタンプ的な側面があります。
タイムスタンプというのは、ある出来事の起こった日時などを客観的に証明してくれるもののことです。
自分のウェブサイトやブログではアップロードの日の修正が簡単にできることに対して、TwitterやInstagramなどのビッグテックが運営するSNSでは一介のアカウントが投稿の日付を修正するのは困難だからです。
これは、そもそも技術的に困難、という点に加えて、世界中で多くの人が同時にチェックしているため、いわばブロックチェーンのような感じでユーザーがユーザーを監視しあうような構造になっているからです。
ツイ消しといってツイートを消すこと自体がよくないことと考える文化があったり、Twitterに限らず結構前からネットでは魚拓といってスクリーンショットなんかで記事や投稿を保存したりする文化がありますよね。
なので、「これ、自分が先に思い付いていたからね。みんなわかっといてよ。」と言うための使い方として、一定のニーズがあるんです。
ただし、Twitterでは「いつツイートしたか」は証明できるのですが、「いつから思いついていたか」は当然証明できないですよね。
より早く思いついていたことを表現したければ、より早くツイートする、という構図になると思います。
ここに「言いたいだけの人」と「将来的に知財で登録したい人」あるいは「水面下でプロダクトとしてのリリースの準備をしている人」の間に、大きな認識の乖離があります。
このあたりをすべて加味すると、製品やビジネスとして何らかのアイデアを活かしたい人は、一刻も早くプロダクトのリリースや知財への登録をする必要がある、ということに至ります。
前置きが長くなりましたが、その前提を覆せるのが、例外の適用、ということです。
自分の場合は元々自分で意匠権の取得をしており、Twitterでのツイートがバズったことで、思ったより反響があるし、出願の予算も取れそうなので出願してみようと思ったのがきっかけでした。
前にも書きましたが、知財は剣ではなく盾なので、持ってるから売上が上がるようなものではありません。
なので剣となる広告に予算を振ったりすることも大事なわけです。
売れないことが確実であるなら知財なんて取る意味無いですからね。
自分の例では「Twitter(X)上でツイートしたことにより喪失した新規性に対して、例外は認められるのか」という点が大きな特徴をもっていました。
ちなみにツイートは、これです。笑
ちょっといいですか?自分が、お鍋の時に欲しくて開発して作ったコンパクトな「菜箸立て」です。自分がコップの底不衛生なのが嫌なので、洗い易いよう底板が外れるようになっていて、パッキンがなくても中に水が注げるくらいの精度があります。こんなん欲しかってん、という方おられますか? pic.twitter.com/PABUUWseYE
— HIRAOKA Yusaku 平岡 雄策 (@HiraokaYusaku) June 27, 2023
通常の出願との違い
まず参考リンクを貼っておきます。
実はリンク先に詳しく書いてあるのと、2024年に入ってから法律が変わり、僕が出願した時よりも条件が緩和されたりしているようです。
ざっと読んでいただく方がいいと思います。
意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(出願前にデザインを公開した場合の手続について)
https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/index.html
意匠の新規性喪失の例外適用手続について
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_shoi/document/13-shiryou/04.pdf
ここからが、自分が出願した時の具体的な方法です。
意匠権出願編で取り上げた出願方法自体に大きな違いはありません。
意匠権出願編の「さくっと書類作成で書類を作成」のところで触れた「対象案件」の「新規性確認」のところだけが変わります。
書類にして2種類くらい増えるだけです。
書類については後述します。
出願時に異なる点を、さくっと書類作成の画面を使って説明します。
前後について把握されたい方は、意匠権出願編をご覧ください。
新規性確認のところで「公知」を選択します。
つまり「公表してませんね?内緒にしてますね?」と訊かれているところに「いや、公表してまんねん!」と勢いよく返す感じです。笑
それでは出願が認められない前提になるので、ポップアップで「公知にした日から1年以内の出願」と「出願日から30日以内に証明書の提出」を警告で出してきます。
ここで「はい」を選んで、そのまま出願まで進めてしまいます。
意匠権出願編にかなり詳しく具体的に書きました。
いかんせんこの「出願をした日」というのがすごく肝になります。
出願さえしてしまえば、その後に同じ内容を別の場所に公開したとしても、出願より後の新規性喪失については何らかの証明をする必要がなくなるからです。
書類の作成方法
公知を選んだ場合に必要となる書類が2種類だけ増えます。
「新規性の喪失の例外証明書提出書」と「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書」の2つです。
厳密には「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書(別紙)」が「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書」の最後にくっつきます。
ほんま書類名長いな。笑
この書類のPDFのテンプレートを貼っておきます。
自己責任ですみませんが、ご自由にお使いください。
ちなみに特許庁が公開しているテンプレートから作成することもできます。
電子出願用のひな型(テンプレート)
自分はテンプレートではなく、特許庁の記載例を見ながら、自分の例である「Twitterでツイートした場合」用にアレンジしました。
個別のケースによって文面は変わってくると思います。
ちなみに上記のテンプレートは年金登録料の納付なんかには便利です。
新規性の喪失の例外証明書提出書 記載例
意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書 記載例
変な空間が上下にあるんですが、特許庁の指定に従ってWordの設定をしたらこうなりました。笑
間違ってるかもしれませんが、これで取れたので。笑
自分の顔写真入ったツイートのスクリーンショットを印刷して官庁に提出するっていうのが、なかなかスパイシーでしたね。笑
合ってるんか知らんけど。笑
これで取れたので。笑
ちなみにリツイートについては証明書に含まなくていいです。
かつ、出願までの公開について最新のものだけでいいようです。
例が巷になかったので、特許庁が公開している文書を自分で繙(ひもと)いて進めるしかないんですよね。
金も無いのでなんでも自分でやるしかない。笑
零細事業あるあるです。笑
解釈とは人によって異なるもので、これはあくまで素人の僕の解釈です。
実際に意匠権の取得はできましたが、確実に進める場合は特許庁や弁理士さんに都度聞いてもらうのが確実と思います。
書類の提出方法
さきほどの2種類の書類の提出方法ですが、出願時に同時に提出しなくても、後追いでOKです。
というか、出願が電子申請できるのに、この例外規定の書類は電子申請で提出できないんです。
これは特許庁に確認しました。
送り先は特許庁の特許庁長官宛で、封筒に朱書きで「新規性喪失の例外関係書類在中」と記載することと、できるだけ書留、簡易書留、特定記録で郵送したほうがいいことを教えていただきました。
上記法改正により、インターネット出願ソフトを使用して電子申請できるようになったようです。
詳しくは下記をご覧ください。
申請手続のデジタル化について
https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/shinsei_digitalize.html
自分はレターパックプラスを愛用しています。
レターパックライトもですけど、こちらは書留的なパワー無いので、レターパックプラス以上で何卒。笑
このあたりの話は下記の記事で触れています。
記事が長いので記事の中で「レターパック」と検索してください。笑
特許庁とのやり取りは、ここに書いても問題ないかと思いますので、書いておきます。
特許庁の方の負担が少しでも減れば嬉しいな。
この記事の公開から時間が経っていたり、ちょっと違うんちゃうかなと思われたら特許庁にお問い合わせください。
今はメールで問い合わせが可能で、めちゃくちゃきっちり返ってきます。笑
役所の苦手な自分でも特許庁は好きな理由のひとつです。笑
役所の人も大変ですよね。
民間と違って相手を選べないですから。
役所の方とやり取りするにつれて、ちょっとだけ気持ちがわかるようになりました。
現場はどこも大変なんですよ。
現場を理解してない人が上に立つ組織は官民関係なく地獄やと思います。笑
まあ見ててほんまにびっくりするくらい仕事してない役所の人もいますけどね。笑
手続きとしては、これでおしまいです。
何のことはない、って感じですね。
お疲れ様でした。
後は審査されて、問題がなければ登録に進めると思います。
そのあたりも意匠権出願編に詳しく書きました。
意匠権についての記事は、一旦これで終わりになります。
気が向けば追加の情報や、番外編として商標権についての記事などを書いてみようと思います。