いや。
僕ちゃいますよ。
僕は看護師ちゃいます。
しがない町工場のおっさんです。笑
こんなことがあったんです。
下の子が生まれる前の話です。
嫁はんと娘の3人で、ショッピングモールに買い物に行ったんです。
百貨店の催事会場で、季節もののセールをやっていました。
何気なく服を見ていたんです。
そしたら急に僕の2メートル先にいた30代くらいの女性が、倒れ込んだんです。
すごく苦しそうで、意識も薄れているように見えました。
連れの男性がすぐに気付いて、声をかけますが反応はなく、体は痙攣しています。
すぐ店員さんが飛んできました。
心臓マッサージをしようと準備している時でした。
1人の50歳くらいの女性が来て、私がやります、と言うんです。
店員さんが、大丈夫です、と、こちらでやりますので、と言ったんですね。
その後でした。
はっきりと言わはったんです。
わたしがやります。
看護師ですから。
って。
力強い口調でした。
自分が心臓マッサージをして、その甲斐なく仮にその方が亡くなっても、まったく後悔の無いであろう声でした。
むしろ今自分が動かなければ後悔する、という感じでした。
その一言で、その看護師さんが後を引き継ぎました。
これは憶測なんですが、おそらく命が消える瞬間を見てきた目って、こんな目なんやろな、と思いました。
僕、自分の子供の出産の時、2回とも立ち会ってるんですが、助産師さんも同じ目をしていました。
言わはることは厳しいんですけど、優しさというか愛があるんです。
誇りがある。
でもそこに、悲しさを乗り越えたような感じがあるんです。
現実の厳しさを身をもって知っている。
修羅場をくぐった人にだけわかる世界が、たぶんそこにあるんやと思います。
僕はすぐに119番したんです。
自分にできるのはそれくらいしかない。
なんですが。
自分でもびっくりしたんですけど。
間違えて110番してたんです。笑
いや、ホンマ笑い事ではないです。
人間テンパるとホンマにだめです。
おかんの付き添いで救急車は乗ったことあったんですが、自分もあまり体験したことのない状況に、完全にテンパってしまって、間違えたんです。
110番「事故ですか事件ですか。」
僕「(いやいや何眠たいことゆうとんねん。急いで救急車呼ばなあかんねん。)いや、あの、その、救急車を。」
110番「こちら110番にかかっていますね。」
僕「えっっ。」
もうね、絶句ですわ。
こんな大事なときに、大事なことを間違える。
失敗ばっかしとんな。笑
なんとも間抜けなことに、その間に他の方が救急車を正しく呼んでくださったようです。
後から警察から逆に電話かかってきましたわ。
無事に救急車呼べましたか、って。笑
完全に戦力外ですね。
無駄どころか足を引っ張る私。
あとはもう無事を祈ることしかできなくなりました。
次に生かします。
この時に、学びが3つありました。
・矜恃(きょうじ)とは、どういうものか。
・焦ると失敗する。
・非常時には当事者と野次馬にわかれる。
3つ目なんですが、やりとりの中で気付いたんです。
見事に、当事者と野次馬の間で線が引かれるんです。
綺麗な二重丸みたいに。
僕には2つのグループの間に太い白線が見えましたわ。
こういう時に当事者側として動ける人間でありたいと思います。