ドラえもんと自動販売機

2009年に入社して、割とすぐ思ったことがあるんですよね。

ドラえもんちゃうねんから、って。笑

当時は、今よりも、もっと短納期案件を中心に受注していました。

短納期案件というのは、特急案件とも言いますが、読んで字の如く、製作納期のとても短い受注案件のことです。

今でも短納期案件は得意なのですが、ちょっと内容が10年前とは違ってます。

昔は、今日受けた仕事を明日納品する。

今は、他社で3ヶ月かかる仕事を2ヶ月で納品する。

似てるようで全然違います。

これは付加価値の話でして、すべての工場に同じことが言えるわけではないです。

前者のような形を武器にして、すごい収益性を上げている工場もあります。

僕は後者に、もっていきたかったというのはあります。

当然、時代背景というのもあります。

それこそ高度経済成長の時は、納期なんていう概念がなかったでしょうから。笑

出来た日が納期や、ゆうやつですね。笑

ホンマに僕が入社した当時は、その特急具合がすごくて、完全に新幹線案件でしたね。笑

一部上場企業さんから、午前中に届いた図面で加工して、午後には納品するんです。笑

今は宅急便で送っちゃうんですが、当時は、ほぼ持ち込みですよ。

輸送費すら満足に貰ってない。

コンプライアンスもクソもないですよ。笑

注文書が届いてないのに納品するなんてことも、しょっちゅうでした。笑

でもね、怒られるのは下請けなんですよ。

コンプライアンス違反や、とゆうて。

おもろいですよね。笑

仲の良い担当者さんは、うちをかばってくれるんですが、商取引上は、うちが悪者です。

今考えたら、注文書出るまで2日でも3日でも鼻ほじりながら待っとけばよかったんです。笑

でも、僕も当時あまりわかってなかったし、先代の考えとしては、お客さんの現場は止まってる、困ってるねんから、すぐ持っていったらんとあかん、という考え方でした。

その考え方は僕も賛成ですし、合理性の観点からも、たかが数千円、数万円の部品のせいで、現地の組立工が何人も手待ちになるのは、極めて良くないです。

そこには、理想と現実の壁がありましたね。

今もあります。

常にあります。

どんどん近づいてますけどね。

当時そういう短納期案件に特化してたとこもあって、来もしない注文に備えて材料を大量に在庫したり、ゴールデンウィークを2日しか休まなかったりしてました。

ゴールデンウィークも営業してる、というのが強みになると勘違いしてたんやと思います。

どっかにしわ寄せいきますからね。

しあわせ、の反対は、しわよせ、なんちゃうかとホンマに思う時あるんですよね。笑

休みを潰して上げた売上、それでなんぼの価値になりますか、という話です。

休みを潰された社員の家族は、どんな気持ちになりますか、という話です。

そのままでは、社員にとって幸せな会社には、なりにくいんちゃうかなと思いました。

もちろん、今の工程管理をもってしても、どうしてもしゃあない時は、休みの日に出てもらうことはゼロではないです。

ほとんどゼロに近づきましたけどね。

人間、できることと、できないことがありますわ。笑

当時は僕も専務も、今より若かったし、徹夜しても大丈夫やったから乗り切れたところはあります。

専務も、夜通し加工してましたからね。

夜飯も朝飯も次の日の昼飯も食わず、ね。

ホンマにようやるな、と思う。

僕の中の伝説の1日ですわ。

お客さんは、その日もあったかい布団で眠ったんやろなあ。笑

まあ仕事ってそういうことですからね。

対価を頂いているわけですから。

ただ、それは僕らが法の外にいるから、できたんやと思います。

家族経営者は、労働基準法の外にいますから。

労働者として守られていたら、それはできてないです。

あんたら、経営者やねんから好きでやってるんやろ、ガタガタゆうな、という意見もあるでしょう。

そんな仕事断ったらよかったやないか、と。

その通りです。笑

よくわかってはる。笑

僕らは好きでやってるんですよ。

月に何百時間手当なしで残業しようが、会社で寝袋ひいたり、駐車場で何泊も車中泊しようが、インフルエンザでも出社しようが、数ヶ月休みが無かろうが、僕らは好きでこの仕事やってます。

嫌やったら辞めたらいい。

その通り。

でもね、誰も我が身可愛さで、そんな働き方をしてるわけじゃないですよ。

恩着せがましい考え方は好きじゃないし、そもそも誰かに着せるような恩なんて持ってないですけど、そんな働き方の上に、今の経済が成り立っているとしたら、それは正しい姿とは、僕は言えないと思う。

僕らは、もうそういう働き方から離れることができましたけど、今もたくさんいると思うんです。

家族経営者に限らず。

法で守られない働き方をしてる人に頼っとったらアカンと思うんです。

人の不幸せの上に人の幸せが成り立っちゃってるじゃないですか。

それで持続可能な社会とは、ヘソが茶を沸かす。笑

もっと全体での生産性を上げていかないと。

で、利益が還元されるようにならんと。

たくさん税金を払っていても、それで満足してる、と、みんなが言える世の中にならないと。

一部の人が甘い汁を吸うて、それを見ながら自分は投げつけられるように仕事を渡されるのは誰だって嫌ですよ。

人間ですからね。

AIにしても、ロボットにしても、それを作ってる人間がいるんですわ。

その人が生産に使うための機械は人間が作ってるんですわ。

その機械の据付も、設定も、人間なんですよね。

工場は自動販売機じゃないですからね。

押しても何も出てきませんよ。笑

ものづくり以外でも一緒ですよね。

僕ら小さな組織としても、もっと発信していかんとあかんと思います。

黙っててもわかってくれる、なんて幻想です。

僕らはこんなことをやってる、胸を張って仕事をしてる、ということも世間に知ってもらいたいし、学生さんや子供達にも知ってもらいたい。

やっている企業もありますが、そこは小企業としても努力の足らんところやと思います。

ただし、それをやる余裕なんてホンマに無いですけどね。笑

それこそ寝る時間を削らないと。

パソコンとか、インターネットとか、アプリとか、AIとか、ロボットとか、活用される時代やからこそ、人間同士の繋がりは大事やと思いますね。

そういうものが分からずに自社の利益だけを追求する企業は、どんどん淘汰されていくと思います。

そのうち協力会社からも愛想を尽かされるでしょう。

まあそうなったら、ホンマにドラえもん探すしかないですね。笑

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