家業は下駄か足枷か

家業は、本来の自分に力を上乗せしてくれる下駄となり得るのか、それとも本来の自分の力が発揮できなくなるよう足を引っ張る足枷(あしかせ)になり得るのか。

結論から先に書くと、場合による、の一言ですね。笑

逆に言うと、下駄にもなるし、足枷にもなる、ということやと思います。

自分も家族経営をしていますが、なぜ応援するようなことを言わないのか、という意見もあるかもしれません。

闇雲に、うまくいくからそのまま進め、というのは、内情をある程度知るからこそ自分にはしづらいものがあります。

人を鼓舞するのは好きやし、基本的に、いけるよ、やれるよ、やったろうぜ、というスタンスなんですが、こと自分自身が家族経営を継ぐかだけは、よう考えてほしい。笑

家業の数だけ家業がある。

この命題を一般化することは難しい。

注意したいのは、足枷になっているにも関わらず下駄にしたいと足掻くことで、自分も含めた全てが傷ついて消耗して疲弊していく、という現象でしょうか。

ただ時間だけが過ぎた、ということも起こりえるし、家業のために自分の未来を捨てる、ということはあまりおすすめしたくないです。

実際、家業というのはすごい特殊な働き方をする部分があり、潰しが効かない部分があります。

なんでもやらないといけないから少ない時間でめちゃくちゃな勉強量になる反面、専門的なことに特化した知識を勉強する時間が削られたりもします。

その時間で仕事しないといけないので。

家業をもつ人間にだって、自分の望む未来を掴む権利があるはず。

狂言師の野村萬斎さんの本を読んだときも、自分自身が文化の象徴たる家系は大変やなと思った反面、そう思いました。

これは僕の持論ですが、自身を構成する要素が人と重なれば重なるほど、相互理解は進みます。

例えば、30代、製造業、2代目経営者、子育てをしている、文系出身、金属加工業、20人くらいの規模の会社、本が好き、音楽が好き、ギターを弾く、日本酒が好き、球技が苦手、とこれ僕なんですが、最初から数えて類似点が増えていけば増えていくほど、お互いの理解はしやすくなる、ということです。

たとえ初対面でも意気投合する確率もグッと上がると思います。

ただし、その数が100になろうが、1000になろうが、その人そのものにはならないですよね。

やから、完全に100%お互いを理解することなんて不可能です。

その人ちゃうねんから。

見えてる景色も、その日の腹の調子も、吸うてる空気の味も違いますよ。

このあたり、般若心経の色即是空空即是色という概念にも繋がると勝手に思ってます。

ただし努力して100%に近づけることはできます。

じゃあ似たような要素を多くもつ人が、できる、いけるよ、と言ったところで本人のすべての要素を完全に理解しているわけではないし、その人そのものでもない。

やからこそ、家業承継者は色んなことを自分で決めないといけないと思います。

事業を畳むことは、決して敗北ではないです。

特に、廃業する時に社員の退職金や次の就職先を世話して、お客さんのサプライチェーンも確保したうえで、きちんと廃業するのであれば、それはもう立派というか、完璧な仕事の1つやと思います。

もし次に事業を興すとなっても、応援してくれる人も多いと思います。

なんやったら、以前の家業の社員が戻ってきてくれるかもしれません。

じゃあ、退職金も用意できず、経営者が自己破産するような形で廃業した場合、それは社長だけの責任なのか。

基本的には社長の責任なのですが、承継して日が浅い場合や、よほど柵(しがらみ)が強かった場合、責任というよりも原因としては、前の代の経営陣や会社そのものがもっていた文化に影響を与えられている場合があります。

これは自分の擁護をしているわけではないです。笑

自分は、もう5年経ってるし。笑

ただし、そこもわかって経営者を引き受けてるわけですからね。

逆にわかってなかったとすれば、それはそれで別の問題です。

まあ継いでからわかることもありますしね。笑

こと製造業においては、色んなことが影響を受ける時間的スパンが長いです。

例えば技術の強化や、製品の移動すら時間がかかります。

質量があるから、納品もメールに添付して送る、というわけにはいかないからです。

これはネガティブな影響だけではなくて、ポジティブな影響に関しても同じと考えています。

例えば、社長になって1期目で売上が2倍に、とか3年で5倍に、とかいう話。

詳細を知れば、ああなるほどと思う実例もあるかもしれないですが、例えば金属加工の世界でM&Aもせずにそんな現象が起こることは極めて稀か、ほぼ無いと思います。

あり得るとすれば、後を継いだ社長が実は社長になる前からコツコツと準備していたことが社長になってから花開いたとか、今までOEMとして細々と作っていたものが自社ブランドとして爆発的なヒットをして売上に繋がった、とかやと思います。

前者やと、先代社長が次の社長に花を持たすために、あえてそういうプロモーション的に動くこともあるかもしれません。

我ながら、すんごいひねくれた見方。笑

実際よほどのイノベーションが起こらない限り、通常の製造方法であれば、急に2倍3倍の量を作れるわけがないです。

やからこそ製造業は固い業界と言われるわけですね。

そこが参入障壁にもなるから、急に売上が半分になる、ということも起こりにくい。

急に競合が発生する、というのも起こりにくいわけです。

機械を買ったからといって技術が発生するわけではないですから。

これは製造業に限らないですが、必ず人がセットで動きます。

ちなみに一定の仕事量あたりの付加価値を上げていくことで、設備も土地建物も人も増やさず、売上を伸ばすことは可能です。

ただし、SEOみたいに時間がかかりますし、しんどいです。笑

じゃあ家業をうまく活用できた場合、これはすごい効果が生まれます。

大変なことがある反面、経営資源としては大きなプラスの部分がありますからね。

イギリス留学やヘビーメタルバンドをやっていた野村萬斎さんじゃないですが、やりたいことと、自分に求められること、自分が付加価値を大きく生み出しやすいこと、をバランスとってやっていく生き方、すごくいいなと思っています。

家業のステンレスジョイントの仕事も、より自分が付加価値を出しやすいやり方に寄せていくし、やりたいことをやる場としてのtodoroの活動も続けたいと思っています。

もちろん個人として発信していくことも。

音楽と金属の融合という野望もあるしなあ。

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